漫画ギーク記

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すべての「格闘する」就活生へ『格闘するものに◯』【小説感想】

 

 2012年の本屋大賞「船を編む」、第135回の直木賞を受賞した「まほろ駅前多田便利軒」等が代表作として知られるのがこの作品の作者である「三浦しをん」さんである。その「三浦しをん」さんのデビュー作が「格闘するものに◯(格闘するものにまる)」である。

 

「格闘するものに◯」のここが面白い

 就職活動を進める大学三年生の藤崎可南子。趣味は読書で、特に漫画が大好き。その趣味を生かして出版社を受けまくるが...。出版社への就職活動、年上(かなり)の恋人可南子の周りの愉快で個性的な仲間たちと送るドタバタ青春小説。就活中でも、そうじゃなくても読めば力が湧いてくる、格闘する人におすすめの本である。

 

格闘する可南子。

 この小説の読みどころの一つに可南子の一人称での語りや、会話のコミカルさがあげられると思う。固すぎず、かつ柔らかすぎず、ちょうど良い読みやすで、しかも笑えるの文章になっている。これは三浦しをんさんの小説に共通してあげられることかもしれないが、デビュー作からもすでにこの持ち味が存分に発揮されているなと感じた。

 例えば、筆記試験を通過して面接をする前のこんなシーンがあげられる。

 それにしても、この講堂には二百人ぐらいが集められている。これが一日に四、五回は繰り返され、しかも一次面接の日にちは二日間用意されている。せっかく筆記に受かっても、うんざりするような人数が残っているのだ。

 時間が来て、ほぼすべてのパイプ椅子が学生で埋まった。人事担当らしい中年の社員が進み出て、簡単に挨拶をする。

「あの筆記試験に受かった皆さんは、相当の雑記王と自負していいですよ」

 ゲッ。嬉しくない。学生たちの間から失笑が漏れた。あの試験は本当にクイズ王みたいな人を求めたものだったのか。何を考えているんだろう。

(出典:『格闘するものに◯』)

 実に読みやすくてコミカルである。 

 

 就職活動でもそれ以外でも、家のことだったり、兄弟のことだったり、恋人のことだったりと、可南子にはどんどんとトラブルが舞い降りてくる。それらを振り払って可南子は無事に内定が取れるのか?

 頑張っている人は、この小説を読むとさらに頑張ろうとの気力が湧いてくるはずだ。就職活動をしていても、そうでなくても、頑張っていることに「該当」する人はぜひ。