漫画ギーク記

漫画を中心にしたおすすめの面白い本について書いています

プロ棋士への試練を語った実話『泣き虫しょったんの奇跡』【本感想】

 

 瀬川昌司さんは、将棋のプロ棋士である。35歳のときにプロ棋士になったが、その道のりは極めて厳しいものだった。一度はプロ棋士になる夢を断たれた。日本将棋連盟の規定でプロになれないことは決定していた。しかし、あきらめずに挑戦し続けることで、ついには日本将棋連盟のルールをも動かし、プロになったのだ。この本は、そんな瀬川昌司さんのプロになるまでを書いた自伝である。

 

プロの棋士になるには

 将棋のプロになる関門は極めて狭い。将棋のプロになるには日本将棋連盟の「奨励会」を勝ち抜き、四段にならなくてはならない。それより、下の段位の人は、プロの棋士ではなくただのアマチュアである。三段がアマチュアでの最高段だが、その三段全員が総当たりで戦う「三段リーグ」と呼ばれるリーグ戦がある。その中で勝ち抜いた二人のみがプロに昇段できるのだ。三段リーグは、一年で二回行われる。プロの将棋棋士には一年で四人しかなれないのである

 奨励会には、いつまでもいられるわけではない。二十六歳までという年齢制限があるのだ。二十六歳までにプロ棋士になれなければ、強制的に退会させられ、二度とプロになるチャンスは与えられない。瀬川さんは、三段になったが、二十六歳までにプロになれずに奨励会を退会させられてしまっていた。

 

元中学選抜選手権チャンピオン

 瀬川浩二さんはどんな人物なのか?中学生が争う将棋の全国大会で優勝するなど、将棋はもちろん子供のときからめちゃくちゃ強かった。なぜ、将棋を始めたのか。子供の頃のライバル、恩師、恩人、青春時代や企業に就職したことなど、この本には瀬川さんの人生が詳細に書かれている。

 

あきらめずにプロ棋士になるまで

 プロの棋士になる夢は断たれてしまったのだが、そこで諦めることはなかった。その後も将棋を続け、アマチュアの大会で優勝する。アマチュアの大会でいい成績を収めるとプロと対局をする権利が与えられる。そこで、なんとプロ相手に二十局以上、戦い七割以上の勝利を収めた

 そこまで、勝ち続けたため、将棋界全体に「瀬川昌司をプロにしてもいいのでは?」との声が上がり始めた。特例中の特例としてプロへの編入試験が認められ、見事に合格し、一度は夢を断たれながらも、ついにはプロへの切符を勝ち取ったのだ。

 あきらめずに戦い続けたことで、日本将棋連盟の制度せすらも変えてしまった

 

 やはり勝負の世界では「強いもの」が、絶対であるとの真理が感じられた。強さこそが正義であり、ルールすらも変えてしまうのであろう。

 これは、「あきらめなければ夢は叶う」を実現した人の物語だ。瀬川さんのおかげで、瀬川さんに続いて奨励会の年齢制限に引っかかった後にプロになった棋士も生まれてきた。

 また、瀬川さんの温かい人柄も感じ取ることができる。皆から愛されて続けたこともここまで来られたことの一因なのだろうと感じた。将棋ファンでも、そうでなくてもオススメな一冊です。

 

関連記事