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時間旅行・冷凍睡眠。タイムトラベルで幸せを掴め!『夏への扉』【小説感想】

 

 古典SFの名作『夏への扉』という作品がある。時間旅行、冷凍睡眠(コールドスリープ)を題材とし未来と過去を行き来するタイムトラベル系のSF小説である。

 主人公のダンは不幸のどん底にいた。フィアンセに裏切られ、会社を乗っ取られ、自分の特許も奪われてしまった。そんなダンが相棒の猫のピートと一緒にバアでジンジャー・エールを飲んでいると、自分の目にピカピカ光る広告が飛び込んできた。

「ミュチュアル生命 冷凍睡眠保険」

 ダンは思いついた。この悩みを忘れてしまってはどうだ?外人部隊に参加するよりは快適だし、自殺するより清潔だ。ぼくの人生を踏みにじった連中や思い出を完全に遮断できる。今まで思いつかなかったが、これ以上の方法はない。

 こうして、ダンは相棒のピートと共に30年後の未来へと旅立つことを決意する。

 

冷凍睡眠(コールドスリープ)

 『夏への扉』では「冷凍睡眠」がSFのアイテムとしてメインの役割を果たす。「冷凍睡眠」は自身の体を完全に凍結することで生命活動を停止し、希望の未来が訪れるまで永遠と眠り続ける。そしてしかるべき時間がきたら目覚め、未来へと着いているといったアイテムである。

  不治の病に冒されて、いずれは死を免れないが、20年後には医学が進歩して救われる見込みがあるというような男ならーそしてその男が、幸いにして、医学が彼の病気に追いつくまでの二十年間の冷凍睡眠の費用をまかなうに足る金を持っている場合ならー冷凍睡眠を試みるのも悪くはあるまい。あるいは、火星へ宇宙旅行に行きたいと願っている男が、彼の人生というフィルムのひとコマを端折ることでことによって、火星行宇宙船の旅費をまかないうると考えた場合ーこれまた、きわめて論理的な試みといってよかろう。

(出典:『夏への扉』)

 

「幸せ」は未来にあるのか?

 未来に行けば幸せは掴めるのか?人生に絶望したダンが幸せを掴むためにひたすらに戦い続ける。どれだけ追い詰められても諦めないダンの不屈の精神がすごい!最後の鮮やかなどんでん返しを是非見てもらいたい。

 要所、要所でいい仕事をする猫のピートにも注目。

 

最後に

 ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にある十一価カ所のドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。

 (出典:『夏への扉』)

 ピートにとっての幸せの扉である「夏への扉」は見つからない。いくら扉を開けようと、凍てつく冬の季節に極楽の夏に繋がる扉なんて魔法のアイテムは見つかるはずもない。では、辛い「冬」を過ごすダンにとっては?幸せに繋がる「夏への扉」は見つかるか?

 『夏への扉』は幸せを求める男と猫にタイムトラベルの絡んだSF界の傑作小説だ。

 

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