熱さ、冷たさ、痛み。人間の感覚まで再現する最強のバーチャルリアリティシステムを用いたミステリー。
ゲームの原作を謎の企業「イプシロン・プロジェクト」に売却した上杉彰彦。
その原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に深く関わっていくことになった。
ゲーム完成間際にモニターとして参加することになった梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。
そこには、自分の作ったゲームの世界が現実と全く区別がつかない状況で広がっていた。
現実と仮想の狭間でさまようことになる一人の青年の命運を描いたミステリー小説。
読み終わった後に自分の体の感覚を疑いたくなってくる。
「クラインの壺」のここが面白い
プロトタイプでの実験
上杉が「イプシロン・プロジェクト」に関わることになったのは、テスト用のプロトタイプに触れた時からだった。
そこには、肘のあたりまである長い銀色の鍋つかみのような機械があった。
手を突っ込むと、その機械は温かさや冷たさなどの温度、水を触ったような感触までもを完璧に再現していた。
この装置を作った研究所は、視覚、聴覚を始めとする人間の全ての感覚を完璧に再現したヴァーチャルリアリティ・システムを上杉のゲームで作りたいと言う。
この提案を快諾したことから、上杉は「イプシロン・プロジェクト」に戻れないところまで巻き込まれていくことになる。
完成したゲーム
そこから上杉は長い時間待たされることになったが、装置はついに完成した。
上杉は、他のモニターである梨紗と共にゲームの実験に参加することになった。
上杉は裸になってスポンジのようなものに挟まれて、感覚をすべてヴァーチャルリアリティ・システムに委ねる。
そして目を開けると、そこには全ての感覚において現実としか思えない状況で、自分のゲームの世界が広がっていた。
仮想と現実の狭間
「イプシロン・プロジェクト」でのヴァーチャルリアリティ・システムの仮想世界の再現度は高すぎた。
上杉もこの世界に夢中になっていく。
だが、ゲームをある程度進めると、突如全ての感覚を失う現象を何度も経験する。
「戻れ」との警告と共に。
ただのプログラム上のバグなのか。それとも何者かの介在か。
上杉は「イプシロン・プロジェクト」やそれを進める研究所に対して少しづつ疑いの目を向け始めた。
終わりに
というわけで、『クラインの壺』を紹介した。
完成度の高すぎるヴァーチャルリアリティ・システムを用いたミステリー小説。
主人公が現実と仮想の間でさまよっていくことになる。
全体として構成のよくできている面白い作品となっている。
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