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妄想を保管できる銀行をめぐっての一波乱『妄想銀行』【小説感想】

 

人間のさまざまな妄想を取り扱うエフ博士の妄想銀行は連日大繁盛。

エフ博士は、人間から妄想を取り出してその妄想をなくし、その妄想を必要としている人に渡すことでビジネスをしている。

妄想を取り出される側は、例えば、男子学生の場合だと、思春期にありがちな女性に関する妄想を取り出す。すると、学生たちは一心不乱に勉学に打ち込み、一流の企業へと就職を果たす。

妄想を受け取る側は、自分に足りない願望や欲望を手に入れることで今まで以上の能力を発揮することができるようになる。

そんな、「妄想銀行」を運営するエフ博士だったが、あるとき自分が愛する女性を手にいれるために、この”妄想”を使おうとした。

だが、このことによって彼はとんでもないしっぺ返しを食らうことになる。

星新一によるショートショート集で、ユーモア溢れる32編が収録される。

 

「妄想銀行」のここが面白い

弱みを見破れる男の悪巧み「ねらった弱み」

『妄想銀行』に収録される面白いショートショートを一部紹介したいと思う。

まずは、「ねらった弱み」である。

とある一人の男がいた。この男は心の弱みを持つ人間を見分ける鋭い能力を持っていた。

そわそわしていたり、ビクビクしているなど内面を隠そうとしていてる人こそ外面におかしな動作が現れる。

男はこの小さな挙動のおかしさを見分けることができるのだ。

男はこの力を使って、何かを隠している人物を見つけては、脅迫をして悪巧みをすることに協力させていた。

今夜のターゲットはバーの中で見つかった。

カウンター席で酒を飲んでいる青年。この青年を脅して、犯罪に協力させることまでは良かったのだが...、事件は思いもよらない方向へと転がってしまう。

 

ネズミたちの一斉移動が始まった「敏感な動物」

ビルの警備の仕事をしている青年がいた。

彼がいつものように、ビルの内部を巡回していると、何かが動いている気配がする。

それは、大量のネズミたちが移動をしている音だった。

ネズミの移動は地震の前兆など、悪いことが起こる前触れだと言われる。

このビルはダメになってしまうのではと思った青年は、他のビルへと仕事を変えてもらう。

だが、新しく仕事を始めたビルでも前のビル同様にネズミが移動を始めていた。

このネズミの大移動の謎を解くために、青年は調査を始めた。

 

大金を手にしたのだが...「魔法の大金」

まともに働くのが嫌いで、酒を飲んでは遊んでばかりいるエヌ氏。

働きたくはないが、金が欲しいエヌ氏は悪魔に頼ろうと考えた。

悪魔を召喚する方法を調べて、悪魔の召喚に成功をする。

そして、金持ちになろうとして紙幣を1万枚作ってもらうことができた。

この金を使ってやろうと考えたエヌ氏だったが、実はこの紙幣にはとんでもない罠が仕込まれていた。

 

終わりに

というわけで、『妄想銀行』を紹介した。

星新によるショートショートで表題作の「妄想銀行」を始めとして、様々なジャンルの物語が収録されている。

ユーモアが効いていて、笑える話が多い。

全36編収録されている。

短い物語を楽しみたい人にはおすすめの小説となっている。

 

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