漫画ギーク記

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本には世界を変える力がある。『世界を変えた10冊の本』【本感想】

 

 読書離れなんてことが言われている。1ヶ月に漫画以外の本を読む冊数が「1、2冊」の人は34.5%、「一冊も読まない」人は47.5%らしい。(出典:「1冊も本を読まない」…47・5% 文化庁調査で「読書離れくっきり」 - 産経ニュース

 日本人の2人に1人が本を全く読まないのだ。本屋にあれほどの本が溢れているのにである。本の販売部数はじわじわと低下している。本の未来には暗い話ばかりだ。

 しかし、本にはとてつもない強さがある。一冊の本が世界を動かし、人類の歴史を変えたことが多々あるからだ。

 そんな「世界を変えた本」を池上彰さんが10冊選んだのが『世界を変えた10冊の本』である。国際問題に詳しい池上さんらしい10冊のチョイスになっている。

 どれも世界を変えた「超有名な本」ばかりだ。

 

世界を動かした一人の少女の日記

 例えば、『アンネの日記』が取り上げられている。作者のアンネ・フランクはドイツ系ユダヤ人の少女である。ナチスドイツの迫害をうけ、父親が経営していた会社の事務所のビルの裏側に隠れ住んでいた。このときに書いた日記が『アンネの日記』であり、もともとのタイトルは『隠れ家』になっている。アンネが見つかってしまい強制収容所に送られるまでの日々が書かれる。

 この本が世界にどのような影響を与えたのだろうか?この本を読むとユダヤ人への迫害の日々がよく分かる。この本を読んだ人は誰もが、ユダヤ人であるがためだけに未来を断たれた少女とユダヤ人へと同情的になってしまう。

 これによって、例えばユダヤ人国家であるイスラエルが多少の無理をしても国際社会は、「まぁ、あれだけひどいことされてきたし、多少は...」と許してしまう。イスラエルが敵だらけのイスラム圏で生き残っていることを支えるのに『アンネの日記』が一役を買っているという。

 『アンネの日記』はユダヤ人を支える意味で歴史を変え、現在も影響を与え続けているのだ。

 

世界が環境問題を考えるきっかけになった本

 地球温暖化、放射能、残留農薬問題など環境問題が注目されている。今となっては誰もが環境問題を多かれ少なかれ考えたことがあるが、まだこれらの問題が世界で広く知られる前にこの問題に警鐘を鳴らした本があった。レイチェル・カーソンによる『沈黙の春』である。

 例えば『沈黙の春』では、農薬に代表される化学薬品の危険性を指摘する。決して農薬を全廃しろとかをヒステリックで感情的に非難しているわけではない。農薬に頼りきり、どんどんと強い農薬に依存し、ついには人体にまで影響を与えるような状態になっていたことを指摘し、弱い効き目の農薬を必要最低限使うことを提案していた。

 今となっては当たり前の考えな気もするが、当時はアメリカ政府・大統領を動かし、国家政策に影響を与えた。人類が環境問題を考えるターニングポイントとなった本である。

  

まとめ

 今回、例としてあげた『アンネの日記』『沈黙の春』の2冊以外にも『資本論』『種の起源』など世界を変えた10冊の本が取り上げられている。取り上げられた本は専門的で読みにくい本が多いが、この本では池上さんらしく、取り上げた本の内容や世界への影響がわかりやすく解説されている。

 今後も本は出版され続ける。出版部数がいくら減ろうとも世界に影響を与え続ける本の力は変わらない。池上さんが取り上げた10冊をチェンジしたくなるような「大傑作」が新たに出版されるタイミングに、生きてるうちに出会えたら面白いだろうなと思った。