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文明・技術の進化は人々を幸せにしたのか?情報化、金、仕事など現代人の「悩み」を説く『悩む力』【本感想】

 

 グローバリゼーションの時代が到来していると言われる。ここ最近の情報技術の発達、特にインターネットを始めとするデジタル技術の進化により、「政治」「思想」「文化」「娯楽」とあらゆるものが国境を越え行き来するようになった。

 グローバリゼーションにより人々は「自由」も拡大した。誰でもインターネットを通じてあらゆる情報を得て、誰とでも交流し、あらゆるものに参加できる。

 しかし、情報化、自由化によって人々は幸福になったのだろうか?確かに年々と技術は進歩し、人々の行動の範囲は広がっている。だが、そのことによって人々の幸福度が上がったとは聞いたことがない。ニートやフリーター問題、非正規雇用問題、格差問題、自殺者数の増加と現代人にまだまだ「悩み」は数多くある。文明の進化は人間を幸せにしたんだろうか?

 そんな「悩み」とどう向き合うべきかを説いたのが姜尚中による『悩む力』である。夏目漱石とマックス・ウェーバーの二人の偉人の考えををヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。

 

「夏目漱石」と「マックス・ウェーバー」の共通点

 夏目漱石は『ぼっちゃん』『吾輩は猫である』『こゝろ』などを書いた小説かである。夏目漱石の作品は、明るい雰囲気を持った作品は少なく、グレートーンな作品が目立つ。漱石の作品を読むと、文明の進化はすばらしいものではなく、人々の孤独感は増していくと感じる作品が多いとのこと。漱石は文明や技術の進化に疑問を持っていた。

 マックス・ウェーバーは世界宗教をテーマとした社会学者だ。ウェーバーは西洋近代文明の根本原理を「合理化」であるとした。合理化により社会の役割は縮小し、個人の力が強くなり、価値観や知識がますます細分化されていくと考えた。つまり、文明が進むほど人々は孤立化していくということだ。

  「夏目漱石」と「マックス・ウェーバー」は文明の進化が人々を幸せにするといったことに疑問を示したことで共通している。この悩みは現代にもまさに存在している。

 『悩む力』では先見の銘を持った二人の考えにあやかろうといった本になっている。

 

文明の進化の功罪

 例えば『悩む力』では情報化の「悩み」に触れられている。

 インターネットによって我々が触れることのできる情報は飛躍的に増えた。ググれば大抵のことはわかってしまう。インターネットにつながる端末さえ手元にあれば「知識のある人」「知識のない人」の情報量なんて誤差の範囲内だと思える。

 しかし、それは本当に「知っている」ことになっているのだろうか?ただ「知ったつもり」になってはいないだろうか?

 インターネットを使っていると自分の世界はどんどんと広がっていく。いいことのような気もするが、結局、人間の知性、肉体、時間には限界があり、一生に使える情報には限りがある。闇雲に無駄に広い世界に足を踏み入れたところでなんとなく「知ったような気がする」だけで、何かを「知ったこと」にはつながらない。

 我々は何を本当に知るべきなのか、自分で選ぶために悩まなければいけない。 このことこそが自分の世界を広げ、自身や社会の幸せにつながっていく。

 

まとめ

 『悩む力』では他にも「「信じる者」は救われるか」 「世の中すべて「金」なのか」「何のために「働く」のか」などの現代人の悩みに対して、夏目漱石とマックス・ウェーバーの考えを取り入れながら、解決策を探していく。

 生きてる限り「悩み」はつきない。悩みこそが生きている証拠だという。強く生きていくための正しい「悩み方」がこの本には書かれている。

 

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