漫画ギーク記

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すべての革命は一人の仮説から始まる『ぼくらの仮説が世界をつくる』【本感想】

 

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』『働きマン』など、ドラマ化、映画化された大ヒット漫画は、一人の編集者によって生み出された。

講談社で編集をした後に、作家エージェント会社「コルク」を起業した経営者でる佐渡島庸平によって、自分の編集技術や本の未来、大ヒット漫画の誕生秘話などが語らわれたノンフィクションが、この本である。

"すべての革命は一人の仮説から始まる"

この信念を基にして、出版業界に新たな風を入れるために、今までとは全く違った形での編集を行うベンチャー企業を立ち上げた。

「革命」を起こそうという姿勢に勇気と希望をもらえる一冊となっている。

 

「ぼくらの仮説が世界をつくる」のここが面白い

"すべての革命は一人の仮説から始まる"

世界は、誰かが思い描いた「仮説」によってできている。

スマートフォンもインターネットもパソコンも、車、電話、飛行機、ロケットといったほとんどのものは誰かの「仮説」によって生み出されたものである。

誰かが、「こうすれば世界はもっとハッピーになる」と思い描いた大胆な絵から、世界は作られていく。

そして、この本の著者は出版業界といった場において、「仮説」を作り出してその検証を行なっていくことによって、”革命”を起こそうとしている。

IT技術の発展によって、出版業界が長年作り上げてきた土台は揺らいできた。

今こそ大胆な”革命”が必要なのである。

この本には、様々な「仮説」とそれによって起こるであろう”革命”について語られている。

 

前例主義では革命は起こせない

現在集められるデータや情報を基にして、仮説を立てて、それを検証していくといったプロセスは多くある。

過去のデータを集めて仮説を立てるようなものは前例主義であるのだが、このような手法からは新しいことは何もでてこない。

感覚を研ぎ澄ませ自然と入ってくる情報をもとにして大胆に仮説を立て、それを全力で証明すること。

それだけが新しいことを成し遂げる唯一の手段なのである。

最初の仮説を立てる段階では、過去の情報は必須ではない。

「情報→仮説→実行→検証」といったプロセスではなく、「仮説→情報→仮説の再構築→実行→検証」といった順番で思考することで、現状に風穴を開けることができるのである。

 

「宇宙兄弟」をヒットさせるための仮説

大ヒット漫画の「宇宙兄弟」の原動力にも、一つの仮説が存在した。

「宇宙兄弟」がまだそれほど売れていなかった頃、読者アンケートによると、男性読者が7割を占めていた。

一方で、その当時売れていた漫画は共通して、7割が女性の読者であった。

通常、書店の漫画コーナーに行くのは女性の方が多いのである。

そこで立てられた仮説が、「女性読者が増えると、『宇宙兄弟』がヒットし始める」といったものであった。

3万部とか4万部くらいの売れ行きだったので、世の中の女性が1000人読んでくれるだけでも、読者の流れが変わるだろうと考え、まずは1000人の女性読者を増やす方法を考えた。

そこで、実行したのだ美容室に無料で「宇宙兄弟」を配ることであった。

美容師に「宇宙兄弟」を読んでもらって、髪を切りに来たお客さんに宇宙兄弟の話をしてもらえば興味を持ってもらえるはずであると考えた。

実際に、読者アンケートでは「美容室でおすすめされた」との声がちらほらと上がって来たという。

このような地道な努力をしていった結果、女性読者の比率がどんどんと増えていき、仮説通りに、「宇宙兄弟」の大ヒットにつながったとのことである。

 

終わりに

というわけで、『ぼくらの仮説が世界をつくる』を紹介した。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』『働きマン』などを生み出した編集者によって、出版にまつわる様々なことが語られた本である。

また、新たに作られた作家エージェント会社「コルク」の取り組みについても存分に語られている。

出版業界での”革命”を起こそうとする様々なチャレンジについて書かれたノンフィクションに興味がある人には、おすすめの本となっている。

 

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